地質調査の基本的な事柄について解説します。
構造物の設計に必要な地盤の力学特性を調べるための一手法として、乱れの少ない試料を用いた室内力学試験が行われています。(乱れの少ない試料とは、土の構造と力学特性を出来るだけ原位置に近い状態で採取したものをいいます。)本編では、ボーリング孔を利用した乱れの少ない試料を採取するためのサンプリング方法を紹介します。
地盤は、粘性土,砂質土,礫混り土,岩,地盤改良土など様々な状態で存在しており、乱れの少ない試料を採取するためには、地盤の状態に適合したサンプラーを選定することが重要です
「基礎地盤コンサルタンツ株式会社 久賀 真一」
土木や建築では、丈夫で安全な構造物を作るためには地盤がどんな土で出来ているか知る必要がある。土の強さや変形特性は土の種類毎に整理され、その情報を利用するためにはボーリングなどの地盤調査を行い、土を分類する必要がある。
構造物を作る土地においてボーリング調査を行うことで、N値と代表的な土の試料を得ることが出来る。土は観察により、粘土、シルト、砂、礫あるいは粘土質砂などと分類する。
基本的な分類方法は、地盤工学では「地盤材料の工学的分類方法(地盤工学会基準:JGS 0051)」に基準化されている。地盤材料は図-1に示すように、粒径に応じて砂粒子(あるいは砂分)とか礫粒子(あるいは礫分)と表される。なお、土壌学や地学とは多少の違いがある。
この方法は観察と土質試験値(含有率、塑性図)が必要であるが、ボーリング調査では土質試験を行いながら土を分類することは少なく、通常は目視観察により土の分類を行いボーリング柱状図を作成する。
地形と地盤は密接な関係がある。地形を読むことにより、地盤とその地盤がどんな土から構成されているかを推定することができる。
地形は大略、山地、丘陵地、台地(段丘)、平地(低地)に区分でき、平地(低地)以外の地形(地盤)では支持力や沈下などの問題は少ないが、地すべり、斜面崩壊、土石流などの災害現象の問題が大きい。一方、平地では支持力や沈下などの問題はもとより、洪水、津波、液状化などの災害現象の問題も大きい。
地形 | 支持力|沈下 | 災害 |
---|---|---|
山地 | 少ない | あり |
丘陵地 | 少ない | あり |
台地 | 少ない | あり |
平地 | あり | あり |
ここでは支持力や沈下の問題がある低地地盤について、問題のある地盤を区分する。
平地(低地)は谷出口から河口までの地形とすれば、大略、扇状地、氾濫原、三角州に区分でき、そのうち氾濫原や三角州では軟弱地盤を形成していることが多い。
地形 | 特徴 | 地盤構成 | |
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扇状地 | 谷口から扇状の緩傾斜地 | 礫~砂 | |
氾濫原 | 自然堤防 | 旧河道や現河道沿いの微高地 | 礫~砂 |
旧河道跡 | 周辺の平地よりやや低く、細長い平地 |
上 下 |
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後背低地 | 自然堤防の背後地 | 粘土・シルト | |
三角州 | 三角州 | 河口付近の低地で、流路は枝分かれ | 砂~粘土・シルト |
潟湖跡地 | 砂州の背後地 | 粘土・シルト | |
砂州 | 海岸に細長く岸と平行に延びた砂地形(例、米子~境港市の弓ヶ浜) | 砂 |
軟弱地盤とは軟らかい粘土や緩い砂で構成され、地盤沈下や地震時に液状化のし易い地盤である。したがって、平地で家を建てるなら、支持力や沈下の問題の少ない扇状地が良いであろう。また自然堤防は以前から集落のある地形であり、木造建築のような軽い建物ならば候補地に挙げられよう。
「アサヒコンサルタント株式会社 福田 正昭」
安息角(angle of repose)とは、地盤工学会発行の土質工学用語集には、“自然にとりうる土の最大傾斜角で、乾燥した粗粒土の場合は高さに関係しないが、粘性土の場合は高さに影響されるので、安息角は一定の値にならない”と説明されている。
この粗粒土(砂)の性質を利用して、砂山の安息角を測定することにより、内部摩擦角を推定することができる。
図-1 応力の状態
図-1に示した応力状態の時、斜面が安定するには、すべり力Tと抵抗力Sの間に、T≦Sの条件が成り立つ必要がある。これを展開すると、以下のようになる。
すなわち、内部摩擦角φは斜面勾配β以上の値であり、安全率1.0の極限状態では内部摩擦角φは斜面勾配βと等しくなる。
乾燥した砂を自然落下させる。
砂山の勾配βを測定する。
「サンイン技術コンサルタント(株) 谷口 洋二」
土質と地質という用語は似て非なるものです。元来、土質が土質力学や土質工学と呼ばれる学問分野から出てきた用語で、土の性質を表しています。一方、地質は表層の軟らかい地盤より深い岩盤や、山岳地の地盤・岩盤の性質を意味しています。感覚的には、土質が軟らかい地盤、地質が硬質な地盤や岩盤を対象としていると言えます。
両者を扱う専門分野は異なり、大雑把に言って工学と理学の違いがあります。そのため技術士の分野でも「建設部門-土質及び基礎」と「応用理学部門-地質」のように区別されており、両者の違いを整理すると下表のようになります。
技術士専門科目 | 土質及び基礎 | 地質 |
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部門 | 建設部門 | 応用理学部門 |
主な出身学科 |
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履修内容 | 土質力学、構造力学、水理学、測量学 | 地質学、地質構造学、地質鉱物学、堆積学 |
主な対象地盤 | 軟弱地盤、一般の土砂地盤人工地盤 | 岩盤、硬質地盤 |
主な対象構造物 | 河川堤防、道路、鉄道、土地造成、橋梁、斜面、シールドトンネル、建築基礎 | 山岳道路、ダム、山岳トンネル、地すべり、斜面、原子力 |
主な要素技術 |
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(基礎地盤コンサルタンツ(株) 岩崎公俊)
スレーキングとは塊状の物質(土塊や軟岩)が乾燥、吸水を繰り返すことにより、細かくばらばらに崩壊する現象をいう。
モンモリロナイトを含む第三紀層泥岩のスレーキング現象
浸水前状況
浸水後5時間
スレーキングのメカニズムには主として、次の2つの考え方がある。
スレーキングのメカニズムとしては、以上のようなことが考えられているが、粘土鉱物のモンモリロナイト(スメクタイト)が含まれている場合、スレーキング現象が顕著となる。これは、モンモリロナイトの膨張性によるものであり、水分を吸収したモンモリロナイトが膨張して破壊を発生させるからである。
一般的に、スレーキングを起こす岩石は、第三紀から第四紀の堆積岩で、泥岩、凝灰岩に多い。土木地質的には、スレーキングを起こしやすい岩は盛土材料としては強度低下を起こしたり、圧縮沈下を生じる原因となる。
切土の場合は、スレーキングにより風化速度が速くなり、深部にまで風化が進みやすい。また、強度低下により斜面崩壊や地すべりの要因となる。切土のスレーキング風化を防止するには、切土面をできるだけ乾燥させないようにすることが重要である。このためには、切土直後に緑化やのり枠等で切土面を保護することが望ましい。
「サンイン技術コンサルタント(株) 谷口 洋二」
地質調査を行なう上で最も基本的な事項に位置付けられるもののひとつに『地表踏査』があります。文字通り地表を自らの『足』を使って歩き、地表で確認できる地学現象を調べていきます。その対象は、地形図にみられないような微地形であり、地表で観察される地質であり、あるいは湧泉(湧水のみられる箇所)であったりとその目的により様々です。
このうち地質調査に絞って考えることにしますが、地質学を専門とする技術者の多くは広い視野で調査目的箇所とその周辺の地質を捉えようとします。 それは、普通の人ならいやがるような山に分け入り、地層が露出している箇所(露頭)を探し、そしてわずかに露出した部分からより多くの情報を集め細かく記載していきます。
それは、岩石の種類や割れ目の状態、硬さや風化の程度、周囲との連続性、etc...です。ここでは、こういう一連の地表踏査の中で最も基本的な技能である『走向傾斜をはかる』を説明しましょう。
最初に用語の説明をしておきますが、地層や断層などの傾斜した面と水平面との交線の延びていく方向を『走向』といい、それに直交する方向は最大傾斜を示し、その面の『傾斜』と呼ばれます。この二つの要素を測定、記録することを『走向傾斜をはかる』といいます。
写真に一般的なクリノメーターを示します。
クリノメーターは磁針と水準器、傾斜を測定するための振り子より構成されています。そして外側の目盛は方位を測定する時に使われ、内側の目盛は傾斜を測定する時に使われます。普通のコンパスと違うのは、方位の目盛のEとWが逆になっている点でこの理由は後ほど説明します。
図1-aでは、クリノメーターの長辺を地層に密着させ、走向を測定しています。このとき、水準器が水平になるように、長辺を地層面に密着させなくてはなりません。 図1-bにはこのときのクリノメーターの磁針の様子を示しました。磁針はNから60°Wへ寄ったところにあります。これをNを基準にN60°W(あるいはSを基準にS60°EでもOK)と記録します。クリノメーターの目盛のEとWが普通のコンパスと逆位置になっているのは、クリノメーターの目盛がクリノメーターの長辺の方位を示すように作られているからです。
図1-a 走向の測定方法
図1-b クリノメーターの読み
図2-aはクリノメーターの長辺を傾斜方向に向け傾斜方位を読んでいるところです。 この場合の傾斜方向は図2-bに示すようにSW方向です。
図2-a 傾斜方向の測定方法
図2-b クリノメーターの読み
傾斜の測定方法を図3-aに示します。今度はクリノメーターを立てて長辺が傾斜方向を向くように密着させます。そして、クリノメーターの目盛のところの振り子の指し示す角度を内側の目盛を使って読みます。この場合傾斜は30°です。
こうやって測定された走向傾斜は、N60°W30°SWなどと表記されます。
図3-a 傾斜の測定方法
図3-b クリノメーターの読み
「株式会社藤井基礎設計事務所 新宮敦弘」
工事に伴う地下水調査において、水位測定は最も基本的な事項として重要です。調査現場での地下水位の測定方法は手動の触針式水位計が一般的ですが、長期水位観測等では最近は自動計測が主流となっています。自動水位測定の手法にはいくつかの種類があり、フロートの上下をメカニカルにチャート紙に記録する方法や、圧力センサーを用いた水位測定法等があります。これらの方法には、それぞれ一長一短があり、用途、使用環境に応じて使い分けられています。
a)フロートタイプ
b)圧力センサータイプ
自動計測型水位計は、測定データを長期間記録させることが可能ですが、機器の故障、誤動作、電池切れ、日差の集積、記録の整理等を考えて、定期的に保守点検を兼ねたデータ収録を行い、欠測のないデータを収録するように心掛けます。また、水位観測データは、データ一覧表だけでなく水位経時変動図として降水量の変動と対比できるように整理し、工事との関係を考察します。
「株式会社ソイル・ブレーン 河村志朗」
がけやきり通しなどで、よく縞模様をみかけることがありますね。地層は、砂や泥、れき、火山灰、生物の死がいなどがたい積してできます。
近くからよく見ると、板を重ねたように層をつくっているのがわかりますね。
板を何枚も重ねたように見える部分を単層といい、単層と単層面を地層面または層理面といいます。
地層は水平にたい積しますので、下にある地層の方が古く、上に行くほど新しくなります。
地層はたい積したあとに地殻変動で傾斜したり、しゅう曲し、上下が逆 になったりすることがあります。
地層の重なり方にはせいごう(整合)とふせいごう(不整合)があります。
たい積した当時は水平であった地層が、地殻変動のために波状に曲げられた現象をいいます。(フェニックスのしゅう曲)
地層の重なり方は二種類あります。不整合は、地殻変動があったことを示す証拠になります。
地層の中に残された生物の死骸・から・足あとなど生物の残した生活のあとを化石といいます。生物のかたい骨や歯などは化石として残りやすいものです。
化石を調べると、地層のできた時代を知ることができます。
地層の時代を決めるのに役立つ化石を標準化石(示準化石ともいう)といいます。
サンヨウチュウ(古生代)やアンモナイト(古生代の中期)やフズリナ(古生代の後期)などが有名です。
コハク (琥珀)
アンモナイト
エイ
三角貝トリゴニア
トンボ
フズリナ
サソリ
サンヨウチュウ
ワンソク類
化石の中には、長い地質時代を通して、あまり進化しないで生き続けたなかまがいます。
現在生きているカブトガニは、、古生代初期のものとほとんど変っていません。
この他には、シーラカンス、イチョウ(銀杏)、オウム貝、ハイギョ、オウム貝、ミドリシャミセンガイなど も生きている化石といわれています。
カブトガニ
シーラカンス
イチョウ(銀杏)
オウム貝
ハイギョ
ミドリシャミセンガイ
(内海建設コンサルタント株式会社 勝原建夫)
天然の粘土は、「粘土鉱物」と呼ばれる鉱物が主成分です。粘土鉱物は、自然界で起こる化学反応により、硬質な鉱物が化学変化してできた物質です。大部分は「層状珪酸塩鉱物」と呼ばれる結晶ですが、ほかにイモゴライト・アロフェンなどの準結晶質~非晶質(結晶の形をとらない)な物質も含まれます。「層状珪酸塩鉱物」は薄い板を何枚も重ねたような結晶構造をなしており、イモゴライト・アロフェンも基本構造は近い形をしています。 岩石を砕いていくと粘土に近いサイズの粒子になりますが、粘土鉱物とは性質が異なります。自然界の粘土には粘土鉱物以外の不純物も混ざっていますが、その性質は粘土鉱物の含有量や性質が大きく関わっています。
「層状珪酸塩鉱物」の形は図に示すように[四面体シート]と[八面体シート]という板状の結晶体が重なり合ってできています。これらの重なり方や間に挟まれるものの違いで、粘土鉱物の種類や性質が変わってきます。粘土鉱物は、その結晶構造が性質を大きく左右します。例えば「白雲母」は板の間に交換性陽イオンだけを挟んでいますが、「スメクタイト」はさらに水の層をはさんでいます。しかもその水分子を出し入れすることができ、それに伴って体積が大きく変化します。このような水を取り込んで体積が変化する粘土鉱物は「膨潤性粘土鉱物」と呼ばれています。
「膨潤性粘土鉱物」を含む地質は、水分の吸収・放出により、体積・含水比・比重・強度などの性質が大きく変化します。また、膨張・収縮を繰り返すと次第に組織が破壊され、強度が低下していきます。このため「膨潤性粘土鉱物」を多く含む岩盤は厄介な存在です。例えばこれらを多く含む岩盤は、地すべりや崖崩れが起こりやすくなっています。このため、こうした岩盤を対象に土木工事を行う場合には、慎重に調査・分析・検討を行う必要があります。
「(株)エイト日本技術開発 嶋 将志」
一般的には「かぎそう」といいます。
地質調査において、互いに離れた2つの地域に認められる地層の新旧を決める作業を「地層の対比」といい、この地層の対比や区分をする際に一つの基準となるのが「鍵層」です。鍵層には通常、火山灰(テフラ)の層・石灰岩の層・石炭の層・化石を含んだ層などが用いられます。しかしながら、どのような地層が鍵層として有効であるかについては、問題とする地域の広さや地質によって異なるため、一概にいうことはできません。
以上を簡単にまとめると、鍵層は次に示すような条件を備えた地層であるということができます。
地質調査において、鍵層の利用はその地域の層の積み重なり方や地質構造の解明を容易にしています。
鍵層の例(美祢の石炭層)
「東邦地下工機株式会社 田上(たうえ)貴裕」
地質調査において、断層や地すべり地形などの調査を行う際には、空中写真と呼ばれる飛行機などによって空中から地表を垂直に撮影した写真がよく用いられます。そして、この空中写真を見ていると直線状の模様に気付くことがあります。これがいわゆるリニアメント(線状模様)であり、空中写真からリニアメントなどを見つけ出す作業を空中写真判読といいます。
リニアメントは、直接的または間接的に地下の地質や構造等を反映しているため、断層などの存在による地形とされることが多くあります。これは、断層の存在箇所では岩石が破砕されて周囲より軟質で崩れやすくなっていることから、地形的に窪みとなり、線状の地形をつくるためとされています。しかしながら、線状模様は何も断層によってのみできるわけではありません。例えば、頁岩の層などの軟質な地層、岩脈と母岩の境界変質部、褶曲軸なども線状の地形をつくることが多いので、線状模様すなわち断層というわけではないのです。
また、いかに詳細で鮮明な空中写真を用いてリニアメントを見出しても、写真はあくまで写真であって、現地踏査によるチェックに勝るものはないということを忘れてはいけません。
リニアメントの例(山口県のランドサット画像)
山口県にはNE-SW方向のリニアメントが多い
「東邦地下工機株式会社 田上(たうえ)貴裕」
岩石が地表にさらされてルーズな含水物質に変化する過程を風化作用といいます。
一般的に、風化作用は次の2種類に分けられます。
この風化作用は主に温度変化による差別的膨張と水の凍結膨張で起こります。寒冷地や乾燥地ではよく目立ちますが、温暖湿潤地では次に述べる化学的風化作用の産物(粘土など)と重なってあまり目立ちません。この風化作用は「岩石を崩壊させる」タイプの風化であり、以下に主な原因を示します。
以上の例ではいずれも岩石は細かくなるだけであって、その化学組成は変化していません。このような風化を物理的風化作用といいます。
この風化作用では、岩石は水和・炭酸化・酸化・加水分解・溶解など水を中心とした接触反応で分解され、溶け出す成分と溶け残る成分に分かれます。岩石中の化学成分には水に溶け出しやすいものと溶け出しにくいものがあり、Cl・SO4、Na・Mg・Ca、K、Si、Fe・Alの順で減少していきます。このため、溶け残る側の成分では酸化鉄と水酸化アルミニウムが富化していくことになります。また、溶け残る側の成分はその成分同士で再結合して粘土鉱物を形成します。一般に風化の進行に伴って、Alに富む種類の粘土鉱物が増えていくことが知られています。
Cl・SO4 < Na・Mg・Ca < K < Si < Fe・Al
以上のように、化学的風化作用は主に水と二酸化炭素などの大気中の成分との反応によって行われます。この他、火山地帯では火山ガスが噴出しているため、岩石と強く反応するSO2などの成分が多く含まれています。これにより、火山地帯では岩石の風化が著しく、樹木も育たないため、殺伐とした風景となっています。
また、化学的風化のしやすさには鉱物による差が大きいため、一般に有色鉱物は風化しやすく、無色鉱物は風化しにくいことが知られています。さらに、有色鉱物および無色鉱物ともに高温で晶出する鉱物の方が風化しやすい傾向があります。火成岩では、カンラン石が最も風化しやすく、石英が最も風化しにくい鉱物として挙げられます。
化学的風化に対する抵抗度の一般的傾向
なお、物理的風化作用と化学的風化作用はそれぞれが単独で進行することは少なく、両作用が相互に絡み合いながら進んでいくのが一般的です。
「東邦地下工機株式会社 田上(たうえ)貴裕」
日本道路公団第1集p1-32 10~50cm
土質工学用語辞典(地盤工学会)p25 玉石 boulder 大礫以上
大礫(cobble)6.4cm~25.6cm
日本道路公団の定義では10cmのフルイに残るものが玉石です。つまり、中径bが10cm以上あればよいので、短径cは10cm以下でも玉石があります。
中山(1965)の研究によれば、扁平度=1-c/bが、河川では0.20~0.50とされているので、c=(1-0.2~0.5)×bであり、中径b=10cmとした場合、短径c=5.0~8.0cmとなります。つまり短径c=5cm程度でもb=10cm以上の玉石であることが多いのです。大礫cobble6.4cmの定義や、ボーリングでの回転による押しのけ効果などを考慮すると、少なくともボーリング確認短径c=5㎝以上は、玉石と呼んでいいと考えられます。(b/cは平均的に1.5前後であることが多いので、b=6.4cmとするとc=4.3㎝、b=10cmとするとc=6.7cmになります)
河川堆積物の礫~玉石は、平たく並ぶ傾向があるので、垂直に確認するボーリングでは、短径cを確認することになります。そのため、長径aを推定するには、経験則として3倍されることが多く、下記の図書で3倍の経験則が記載されています。
「ボーリングデーターの見方と活用ノウハウ」、近代図書
「ボーリング図を読む」理工図書
3倍という数値的根拠のひとつは、Krumbein(1955)の球形度{R=(bc/a2)^0.5} と、河川礫の平均球形度が80%の頻度でR=0.3~0.6にあるとした中山(1965)の研究成果から導けます。中径b=1.5cとした場合、R=1.2c/aなので、a/c=2.0~4.0で、平均3.0です。最大値ではなく、平均的に3倍という意味になります。ということは、遭遇確率や不均質分布を考慮した安全側の値ではありません。
子供の頃、河原で水面石飛ばしの礫をさがすと、意外にせんべいに近い礫があったような気がします。つまり、小さい礫は河川の水の摩耗で平坦になり、わりと扁平なものを見つけやすくかった記憶があります。小さめの礫ほど扁平なものが多い傾向は、日本全国の河川で確認されています。
木村(2014)によれば、利根川,天竜川,日野川,高梁川,重信川の玉石の径についていずれも同じような短径依存性があることが確認され、短径10cm以下では1/3程度は3~5倍であり、短径20cm以上ではほとんど3倍未満であることが判明しています。
現場毎に周辺の河川礫を測定し、現場特性に合わせて判断することが望ましいのは言うまでもありません。ただ、遭遇確率や不均質を考慮すると、平均の3倍則を当てはめるのではなく、下式の99%確率の式で推定するのも、ひとつの方法といえるでしょう。
99%確率での推定式
河川中流~下流: a/c=7.92c^-0.351 a:長径cm c:短径cm
河川上流: a/c=9.54c^-0.378
「株式会社エイト日本技術開発 木村隆行」
地形とは,地表の高低や起伏の形を言います。谷,平野,台地,丘陵,山地,山脈などは,私たちが日常的によく目にする地形です。地球の表面は,断層運動や火山活動等の影響で持ち上がったり沈み込んだりします。さらに,そのようにしてできた高まりは流水や風の作用により浸食され,生成した土砂は流水や重力の作用により移動し,堆積します。このようなさまざまな成因により,多種多様な地形が形成していきます。
地形判読は,地形図や空中写真などを用いて地形を読み解くことにより,その土地の地形の成因を理解し,大地の物語を明らかにする作業です。地形図は同じ標高を線で結んだ「等高線」により地形の起伏などが描かれた図面で,等高線の間隔が広い所はなだらかな地形であり,逆に間隔が密な所は斜面が急峻であることを示します。空中写真は航空機などから地表を垂直に撮影した写真で,測量などにも用いられる極めて精度の高い写真です。
下に示す空中写真と,同じ地域の地形図を例に,地形判読をしてみましょう。ここは徳島県三好市池田町の中心地です。池田町の市街地が広がる図中央の平坦面は,「吉野川」の河床から数十m高い標高にあり,古い時代の吉野川の河床が地殻変動により隆起してできた河岸段丘と考えられています。市街地の北側の山麓を,現在の吉野川が西から東へ流れます。図右端のA地点では,東北東-西南西方向に直線状に延びる山麓斜面がみられます。その西にあるB地点のすぐ南には,標高差は小さいものの,西南西の方向に延びるはっきりとした崖がみられます。図の左の方へこの崖を追跡すると,なだらかな丘陵地形を分断する谷につながり,C地点に達します。A地点からB地点を経てC地点に至るほぼ直線状の地形(リニアメントと呼びます)は,中央構造線と呼ばれる活断層の運動によって形成された断層変位地形と考えられています。連続的な崖は,河岸段丘が中央構造線によって切断され、上下にずらされてできた断層崖です。またC地点からD地点にかけての範囲には,畑が発達するなだらかな丘陵地形が広がりますが,これはかつての吉野川をせき止めた地すべり移動体と考えられています。中央構造線は河岸段丘と地すべり移動体を共に切断していますので,それらの形成よりも後の,ごく最近に活動した(つまり,地震が発生した)ことが地形から読み取れます。
地形判読は,上の事例で紹介した活断層や地すべりといった地表の変動だけでなく,地質構成や地質構造,地盤の硬軟,地下水の状態といった,地質現象に関する様々な事象の推定にも利用されます。建設技術者は地形判読の技術磨き,それを活用することにより,施工対象地ばかりに目を奪われず,広い視野から地形・地質に関する情報を収集し,問題を解決していきます。これにより,災害に強い,安全な構造物が整備されていきます。
「池田町」の市街地は活断層に切断された河岸段丘面の上に発達している
上:国土地理院発行空中写真csi-74-9 c16a-23,24に一部加筆
下:国土地理院発行2.5万分の1地形図「阿波池田」に一部加筆
「株式会社荒谷建設コンサルタント 加藤弘徳」