災害・環境と地質

災害や環境と地質および地質調査の関係を解説します。

組織地形

岩石・地質の性質、特に浸食に対する抵抗性の違いから形成される特徴的な地形があります。これを組織地形といいます。組織地形をつくるような浸食の違いを差別浸食といいます。
典型的な組織地形には、図-1に示すようなホグバック、ケスタ、メサ、ビュートといわれるものがあります。

浸食に対する抵抗性の違いがつくる組織地形の図
図-1 浸食に対する抵抗性の違いがつくる組織地形

急傾斜した浸食されにくい地層が突出して山稜となっているものをホグバック地形といいます。
地質の浸食性の違いや、層理面の方向による安定勾配の違いによって形成される地形勾配の非対称山稜をケスタ地形といいます。
浸食されにくい地層がほぼ水平にテーブル状に形成されたものをメサ地形、小さく孤立したものをビュート地形、これらの最上部を構成する浸食されにくい岩石をキャップロックといいます。
ケスタとメサ地形の代表的な例を写真-1、2に示します。

ケスタ地形(非対称地形)(鳥取市河原町)の写真
写真-1 ケスタ地形
(非対称地形)(鳥取市河原町)
左側の緩斜面が流れ盤構造で
第三紀層の地すべり地帯。

メサ地形(霊石山:鳥取市河原町、用瀬町)
写真-2 メサ地形
(霊石山:鳥取市河原町、用瀬町)
山頂部がテーブル状の
平坦面を呈する典型的なメサ地形。
地すべり地帯です。

次に、浸食抵抗性・地質の硬軟により形成される地形断面を図-2に、事例を写真-3に示します。

地質の硬軟により形成された地形断面の解説図
図-2 地質の硬軟により形成された地形断面

花崗岩の上にのる玄武岩(キャップロック)の写真
写真-3 花崗岩の上にのる玄武岩
(キャップロック)(米子市近郊)
地層境界の脆弱部で
差別浸食が進行しています。

「サンイン技術コンサルタント株式会社 谷口 洋二」

自然由来の重金属等・酸性水の問題

近年、人為的な行為に伴って引き起こされる自然由来の重金属や酸性水等による環境汚染が、クローズアップされつつあります。

自然由来の重金属等のうち、有害なため基準が設定されているものを以下の表に示します。

自然由来の有害重金属の種類と基準の表

では、自然由来の重金属等・酸性水問題とは、どのようなものなのでしょうか?

なにが問題?
もともと自然の岩盤や地層に含まれている天然の有害重金属等や酸性水が、人為的な原因(土木工事等)によって環境に出てくること。
どんなときに発生する問題か?
土木工事などにより、岩盤が細片化され、大気や水に触れるようになったとき、重金属等や酸性水の溶出が発生しやすくなる(下図参照)。例えば、トンネル工事、切土工事により発生したズリを盛土するときが問題となる。酸性水は、天然の黄鉄鉱等が酸化することで発生する。
どのような被害が出るのか?
重金属等は、一時にあまり多くの量を人体に取り込むと、健康被害を生じる。 酸性水は環境や構造物を破壊し(下写真参照)、また一部の重金属等を溶かし出す。

土木工事に伴う自然由来汚染のメカニズム概念図
左写真:酸性水を発生させる黄鉄鉱。右写真:酸性水による法面のラスと鉄筋の腐食事例

それでは、どういったところでこのような問題が多いのでしょうか? 資料や過去の経験などから、特に自然由来の重金属リスクが高い地質条件としては、以下の表に示すようなものがあげられます。

自然由来の重金属リスクが高い地質条件
地質条件 備考
鉱山・鉱脈・鉱化帯 多くは古い鉱山跡やその周辺のズリ山など
海成堆積物 海水は、一部の重金属等を環境基準値以上含んでいる(ふっ素1.5mg/L、ほう素4.6mg/L)。そのため海成堆積物には、海水起源の重金属等を多く含む傾向がある。また、黄鉄鉱も多い。
貫入岩脈・熱水脈・変質帯 岩脈や熱水脈に沿って、重金属等や黄鉄鉱が濃集するケースがある。
温泉・鉱泉 一部の温泉は、天然ミネラル分が多すぎて、飲料水の基準を超過するものがある。

そもそも重金属等は自然界に普通に存在するもので、人の体にとっても必須元素とされているものもあります。「良薬口に苦し」という諺があるように、重金属等はその摂取の程度によって、毒にもなれば薬にもなります。例えば、温泉の成分の中にはこうした重金属等がとけ込んでいるものもありますが、人はそれをうまく利用して健康維持に利用しています。一方で、それをとりすぎることにより、体調不良や病気につながることもあります。

このように、自然由来の重金属等が原因で人の健康被害を招く場合もあり、その場合はリスクや状況に応じて対策を検討する必要があります。

地震予知の現状

人類は地震による被害を軽減するために、揺れに強い建物を造る努力を続け、現在では大地震に耐えられるような建物を造ることができるまでになりました。ところが近年、地震の発生が昔と比べて多くなったと言われるようになり、これに伴って地震による被害の報告もよく耳にするようになりました。また、ひとたび阪神・淡路大震災のようないわゆる大地震が発生すると、一瞬で多くの尊い人命と貴重な財産が失われてしまいます。このような理由から、地震予知の実現に対する人々の期待には大変高いものがあります。しかしながら、それは極めて困難な課題であり、結論から言うと残念ながら現在の技術レベルは実用的段階には程遠いと言わざるを得ない状況にあります。

人類は地震の発生時期を予測して被害を軽減しようと、数千年前から地震予知を試みてきました。ところが現在でも、一般には地震の発生を事前に正確に予知することは困難とされています。端的に言って「何月何日の何時に、どこでどれだけの規模の地震が発生する」といった範囲・形式での予知を、科学的な手段による根拠を提示して行うことは、少なくとも現時点では不可能です。

この地震予知がなかなか進展しない理由の一つとして、そもそも対象とする大地震の発生頻度が少ない上に、我々の経験蓄積速度が極めて遅いことが挙げられます。すなわち、多くの観察や実験から経験を蓄積し、その中から法則性を見出し、その法則に基づいて将来を予測するというのが科学の常道です。ところが、地震計による観測が開始されてからやっと100年、本格的な調査観測がなされるようになってからはまだ30年程度しか経っていません。これらの期間は大地震の1サイクルにも満たない時間であり、大地震の歪みが蓄積された数千年の時間に比べると30年は一瞬であると言えます。このように、大地震の発生前後に震源域の近傍でどのような現象が生じるのかについて、我々の知識はあまりに乏しいのが現状です。

しかしながら、それでも東海地震だけは何とか予知したいとの願望から、特別にぶっつけ本番の予知体制が執られています。現在、静岡県周辺では重点的に地震や地殻変動の観測が実施されており、これにより東海地震は世界で初めて偶然ではなく、狙って予知することができるのではないかと期待されています。

ところで、地震学者や行政が公式に認め取り組んでいるのはほとんどが地学的な地震予知です。また、一部の研究者は従来の地学的手法とは異なる観測方法を用いた地震予知を研究しています。これらの他に、地震前に広く見られると言われている種々の前兆現象を予知に用いる研究をする人もいますが、地震学者からはほとんど認められていないのが現状です。例えば、地震が発生する前に現れるとされる気象現象や生物の行動の変化などを前兆現象として捉え、地震を予知しようとする試みがあります。ただし、ほとんどが未だその妥当性やメカニズムに関して一般的に論ずることのできる段階にはありません。特に地震雲については、岩盤の破壊により電磁波が生じて雲を作るとされていますが、雲の形と地震発生との関係が全く不明で、また雲のほとんどが気象状況により発生のメカニズムが証明できるものであり、否定的見解が多数派を占めています。

現時点では地震予知の方法に決まった公式があるわけではなく、ある地域では有効な観測手法も他の地域では役に立たない場合もあります。このため、地震観測と地震変動観測を大きな2本柱とし、関連のありそうなデータはできる限り多く集めて総合的な判断を行うというのが、現在の地震予知の基本的な考え方となっています。

(東邦地下工機株式会社 山口営業所 田上(たうえ)貴祐)

ハザードマップ(Hazard Map)

洪水・土砂災害・津波・高潮などの自然災害による被害を予測し、万一の場合には円滑で迅速な避難ができるようにするために、避難に役立つ情報・・・例えば、災害想定区域や避難場所、避難経路や避難情報の伝達経路などを、住民にわかりやすく地図上に示したものです。災害危険箇所分布図とも言います。

代表的なものとしては土砂災害ハザードマップがあります。これは、大雨や地震などにより発生するがけ崩れなど、土砂災害の恐れがある箇所を地図上に表示したものです。

他には、洪水ハザードマップ、地震ハザードマップ、富士山ハザードマップ、火山ハザードマップなどがあります。

土砂災害危険区域マップ

危険箇所の要件

土石流危険渓流
土石流が発生する恐れのある渓流で、被害が予想される区域内に人家が5戸以上ある場合。
急傾斜地崩壊危険箇所
がけの勾配が30度以上、高さが5m以上で被害が予想される区域内に50m未満で近接している人家が5戸以上ある地区。
山腹崩壊危険地区
公用もしくは公共用施設、または2戸以上の人家に、直接被害を与える山腹崩壊が発生する恐れのある地区。

いつ災害が発生しても落ち着いて対応ができるように、平常時から備えておけば安心です。そのためには、ハザードマップを活用して日頃から家庭や地域で災害が発生した場合の避難方法について話し合っておくことがとても大切です。

災害は忘れた頃にやって来る

でも

備え在れば憂い無し

  1. 自分の住んでいる地域にはどのような災害が発生する可能性があるのかを知っておきましょう。
  2. 最寄の避難場所を確認しておきましょう。
  3. 避難場所に行くのにはどのような経路があるか調べておきましょう。

(内海建設コンサルタント株式会社 勝原 建夫)

液状化

液状化とは、地盤が地震などの急速な繰り返し載荷を受けたときに、あたかも液体のようになってしまい、支持力を失う現象のことです。従来は、飽和している緩い砂地盤で発生しやすいといわれてきましたが、1995年の兵庫県南部地震などでは、礫質土あるいは細粒分の多い土での液状化も報告されています。

その発生メカニズムは、次のように考えられています。

図 液状化のメカニズム

平常時
液状化のメカニズム。平常時の地盤の状態模式図
地震時
液状化のメカニズム。地震発生中の地盤の模式図
地震後
液状化のメカニズム。地震後の地盤の模式図
  1. 地盤が地震動を受けると、土粒子はより安定化するために体積収縮しようとします。
  2. ところが、地震時のように短時間の急速載荷の場合、砂地盤といえども土粒子間の排水が許されない状態となり、地盤の体積は一定に保たれたままとなります。そのため、体積収縮しようとする土粒子の移動は、間隙水圧の上昇に転化されます。
  3. この間隙水圧の上昇によって、土粒子間の有効応力が減少し、地盤のせん断抵抗が失われます。地震時に見られる噴砂や噴水などの現象は、液状化に起因するものと考えられています。

このような液状化現象は、構造物に多大な被害をもたらすため、事前に地盤状況を十分確認し、それに対応した設計が必要です。

兵庫県南部地震の時に六甲アイランドで見られた噴砂跡の写真

 

兵庫県南部地震(1995年1月)時に六甲アイランドで見られた噴砂跡

 

「復建調査設計株式会社 藤本 睦」

活断層と地震

1995年の阪神淡路大震災以降、地震断層や活断層という言葉を耳にすることが多くなりました。断層とは、地殻内部に加わる応力によってひずみが大きくなって割れ目を生じ、地殻がずれ動いて生じたものです。この断層形成や活動(断層活動)によって地震が生じます。地震によってずれ動いた割れ目が地表面に現れたものを地震断層といいます。

活断層とは、ごく最近の地質時代や歴史時代に繰り返し活動した断層であって、将来も活動することが予想される断層のことをいいます。ごく最近の地質時代とは、一般には第四紀(180万年前から現在まで)とされていますが、第四紀の前半で活動を停止した断層もあるために例えば約12万年前以降などもっと短い期間に限定する場合もあります。

「[新編]日本の活断層」には、2,000以上の活断層が示されていますが、確実度の高いものからI、II、III の3ランクに区分され、活動度はある長い期間での平均変位速度の大きさによってA、B、Cの3ランクに区分されています。さらには、活断層の長さから地震規模を推定し、活断層の概略の危険度評価が行われます。

活断層はすぐに地震を引き起こすものではありませんが、活断層が過去にどのような活動を起こしたかを詳細に調べることが、危険度評価をより正確なものとすることができます。このためには断層を横切るトレンチ掘削法により、断層運動の痕跡を調査することが有効な方法とされています。

トレンチ掘削の例
トレンチ掘削例。調査中の現場写真

トレンチで確認された活断層の例
トレンチで確認された活断層の写真

「株式会社ウェスコ 伊藤 徹」

土砂災害への備え~いざという時のための心構え

いざという時のための心構え
恐ろしい土砂災害を防止するために、現在さまざまな対策が行われていますが、それだけでは十分に災害を防ぐことができません。

被害を最小限に抑えるためには

  • 気象情報などに注意し、いざという場合に備えましょう。
  • お年寄りや子供がいる場合には、特に早めの避難を心掛けましょう。

雨に注意していますか?

雨の降り方に注意しておきましょう
土砂災害の多くは雨が原因で起こります。長雨や大雨で危険だと思ったら、早めに避難しましょう。1時間に20ミリ以上、または降り始めてから100ミリ以上の降雨量になったら十分な注意が必要です。

避難場所は決まっていますか?

いざという時の避難場所を決めておきましょう
普段から家族全員で避難場所や避難する道順を決めておきましょう。災害が起きる時、家族全員がいっしょにいるとは限りません。そんな時もあらかじめ避難場所を決めておけば安心です。

逃げ方を知っていますか?

土石流などからの逃げ方を学んでおきましょう
土石流は速度が早いため、流れを背にして逃げたのでは追いつかれてしまいます。土石の流れる方向に対して直角に逃げるようにしましょう。

非常持ち出し袋を常備していますか?

非常持ち出し袋を常備しておきましょう
食料、飲料水、懐中電灯、ラジオ、ローソク、マッチ、貴重品、医薬品など非常持ち出し袋を常備しておきましょう。

危険信号を発見したら
すぐに市町村役場、都道府県事務所連絡をしましょう。

実際に災害が起こったら
すぐに110番、119番通報をしましょう。

「内海建設コンサルタント株式会社 勝原建夫」

土砂災害への備え~こんな前触れには御注意を

こんな前触れにはご注意を!
ふだんから、自分たちの住む地域の自然条件に関心をもっていることが大切です。

豪雨の時長雨の時洪水警報発表の時
は、土砂災害が発生する危険が高まります。

山崩れの危険信号

がけ崩れ

がけ崩れのイメージ

  • 斜面から水がふき出す。
  • 小石がパラパラ落ちてくる。
  • がけに亀裂が入る。
  • がけから流れる水が濁る。

土石流

土石流のイメージ

  • 山鳴りや立木の裂ける音、石のぶつかりあう音が聞こえる
  • 川の流れが濁ったり、流木が混ざりはじめる。
  • 雨が降り続いているのに、川の水位が下がる。
  • 腐った土のにおいがする。

地すべり

地すべりのイメージ

  • 斜面から水が吹き出す。
  • 沢や井戸の水が濁る。
  • 地面にひび割れができる。

「内海建設コンサルタント株式会社 勝原建夫」

地すべり地形

地すべりは大規模な侵食現象の一つであり、一般に頭部付近には馬蹄形状の凹地形、末端付近は凸状の押し出し地形などが形成されます。地形図上では周辺部より緩斜面であったり、等高線の乱れなどから地すべり地として認識することができます。以下にいくつか例を紹介します。

地すべり事例写真。大きな滑落跡と、下方の緩斜面(泥岩分布)の地すべり。「写真1」正面の山腹斜面(安山岩)に大きな滑落跡がみられ、下方の緩斜面(泥岩分布)で地すべりを生じています。安山岩の山は地すべり地への地下水供給源となっており、これを助長する原因の一つとなっています。
このように地すべり地は地下水が多いことからしばしば水田として利用され、また土壌が撹拌されることから、おいしい米ができると言われています。

地すべり事例写真。岩盤地すべりと陥没帯。「写真2」山頂付近に地形のくびれがあり、土地が陥没したように見えます。岩盤地すべりではこのような陥没帯を形成することが多く、写真からは矢印方向への大規模な地すべりが予想されます。ちなみに日本の地すべりでは比高150mの山が真っ二つに割れ、斜面長700m、すべり面傾斜2~3度で滑動するといったものもあります。

地すべり事例写真。表層すべりの断面。「写真3」地すべり対策ではその断面図を作成し、様々な検討を行いますが、最も重要なのはすべり面形の決定です。
写真は規模の小さい表層すべりですが、本物の地すべり断面であり、珍しいものです。
これによれば中腹部に基岩面の変化点があり、これを境に上部と下部に細ブロック化し、地表面にその影響が表れているのが良く分かります。

「国土防災技術株式会社 瀬崎 茂」

地盤沈下

地盤沈下は、地表面の相対的な沈下現象のことを示しており、主たる原因としては、地球内部の運動いわゆる地殻変動によって生じるものと、人工的又は自然的原因によって生じるものとがあります。私たちの日常生活で話題となる地盤沈下の多くは、ほとんどが海岸近くの沖積平野に集中しています。

地殻変動による地表面の変状には、地震の前後や火山活動によって生ずるものがあります。最近では1995年の兵庫県南部地震や1999年の台湾・集集地震での大規模な地盤の隆起や沈下が記憶に新しいことと思います。

沖積平野地域における地盤沈下は、地盤中の液体(多くは地下水)を抽出(揚水)することによって生じる圧密沈下によるものや、盛土などの荷重を新たにのせることによって生じる圧密沈下によるものが主体と考えられます。

圧密とは、水をたっぷり含んだスポンジを両手で抑えると、水がしぼり出されてその分だけスポンジが収縮するような現象のことです。つまり、水が強制的に排除されたり、排除するような力(荷重)が加わると、スポンジのように柔らかい地盤で構成されている地域では圧密により地盤沈下が生じます。

私達の地盤を構成している土は、土粒子とその間の間隙とで構成されており、砂よりも粘土のほうの間隙がはるかに大きく、しかもその間隙は水で満たされています。さらに、地盤の生成された時代が新しいほど間隙はより大きくなります。このように、地盤のつくられた時代が新しく(埋立地や造成盛土を含む)、かつ、その土が粘土に近く、間隙が水で満たされているような地盤は圧密沈下の発生しやすい状況にあります。

地盤沈下が生じると、地表面の構造物も一緒に沈下していくために水路が流れにくくなったり、構造物が傾いたりします。このため構造物が沈まないように長い杭で支えとやると、逆に建物が抜け上った状態となります。このように、地盤沈下は周辺地表面との沈下量に差が生じるため、私達の生活環境に影響を及ぼすこととなります。なお、都市部での過剰な地下水汲み上げにより発生する広域沈下と呼ばれている現象は全国の平野部で多く見られましたが、地下水汲み上げ量の規制を強化したことによってかなり沈静化しています。

建物(杭基礎)と外構との不同沈下
(撮影:都宮和久)
建物(杭基礎)と外構との不同沈下の事例写真

軟弱地盤上の道路の変形(凹凸)
(撮影:都宮和久)
軟弱地盤上の道路の変形(凹凸)事例写真

建物と外周構造物との不同沈下の事例写真建物と外周構造物との不同沈下
沈下により階段部分にブロックが継ぎ足しされ、新しい階段とされている。右側の斜路部擁壁には約30cmの沈下が生じている。

橋梁との取り付け部の沈下の事例写真橋梁との取り付け部の沈下
堤防部分が沈下しコンクリート壁や護岸ブロックに亀裂や変状が発生している。

「株式会社ウエスコ 伊藤徹」

地質汚染

人間が環境中に放出している廃棄物や廃液には有害物質が含まれています。

それらの大部分は最終的に地質圏(地下)に浸透し、地下水を汚染します(地下水汚染)。また地層粒子を汚染し、地層状の有害人工地層として固定されます(地層汚染)。

さらに、汚染地層や汚染地下水からは有害ガスが発生することもあり、地下空気を汚染させます(地下空気汚染)。

地層汚染(土壌汚染を含む)、地下水汚染、地下空気汚染をまとめて、地質汚染といいます。これら3つの汚染は、互いに関連しながら進行していきます。

汚染現場周辺の正確な地質構造・水理地質構造を調べ、汚染物質の浸透と拡散など汚染機構とその過程を明らかにして対策を講じる必要があります。

地質汚染の調査・対策の手順は、その現場と社会の実状にあわせて、いかに効率よく地層汚染や地下水汚染、地下空気汚染をなくすかが基本となります。

調査・対策現場では、汚染被害の事前調査と対策→汚染機構解明→診断・予測と対策の決定→汚染物質除去対策→監視(モニタリング)、の流れ図に沿って行うのが合理的です。

地質汚染の原因を地質調査や各種の分析調査で明らかにし、その知見を地球環境の保全に生かしていくことは、ジオ・ドクターとしての重要な社会的役割の一つです。

地質汚染の概念図

地質汚染機構解明調査の手順

  1. 既存資料の収集解析+サイトマップの作成
  2. 地下空気汚染調査
  3. 地層汚染調査
  4. 地下水汚染調査
  5. 地質汚染機構の解明

地質汚染浄化の手順

  1. 地質汚染機構解明調査
  2. 汚染浄化のための精査
  3. 最適な場所と技法の選択
  4. 完全浄化

「第一コンテク株式会社 駒崎友晴」

深層崩壊

 深層崩壊とは山腹斜面の表層の堆積土砂層だけでなく、深部の基岩(岩盤)部分を含む深度の大きい斜面崩壊のことです。深層崩壊の発生は地下の地質構造(割れ目の方向など)や深層地下水が影響して生じると考えられています。また、降り始めからの雨量が数百mmという大きな降雨や大規模な地震により発生します。深層崩壊は降雨終了後数時間以上経過して発生することもあります。
 地すべりも基岩部分を含む土塊の移動現象ですが、地すべりは土塊の移動速度が遅いものが多いのに比べ、深層崩壊は崩壊土砂の動きが速く一瞬で広い範囲の山腹斜面が崩れてしまうこともあります。
 深層崩壊では崩壊土砂が数百万m3に及び、河道部ではその崩壊土砂で天然ダムを形成することもあります。河川の対岸で生じた深層崩壊で被災するなど表層だけが崩壊するケースよりも被害の及ぶ範囲が広いという特徴があります。
 近年では2008年の岩手・宮城内陸地震や2011年台風23号により紀伊半島で深層崩壊が発生しています。

深層崩壊斜面
図1 平成23年台風12号による深層崩壊斜面(奈良県五條市大塔町赤谷地区)

「株式会社エイト日本技術開発 海原荘一」

 

天然ダム

 数100mmを超える降雨や大規模な地震等では山腹斜面の深部の基岩部分を含む深層崩壊等により、多量の土砂が河川に堆積し流水をせき止めるものを天然ダムといいます。天然ダムは水位が上昇し、天端から越流を始めると決壊し、下流に大量の土砂と水が流れることがあります。流域面積(雨が集まる範囲の面積)が広い天然ダムでは数時間で決壊することもあります。
 越流以外にも漏水で堤体を形成する土砂が流れ出すこと(パイピング)による決壊や天然ダムの堤体内水位が上昇して堤体がすべりを生じることにより崩れるケースもあります。

湛水池と深層崩壊斜面、天然ダム堤体の写真
図1 平成23年台風12号による天然ダムと深層崩壊斜面(奈良県十津川村栗平地区)

「株式会社エイト日本技術開発 海原荘一」