地盤沈下は、地表面の相対的な沈下現象のことを示しており、主たる原因としては、地球内部の運動いわゆる地殻変動によって生じるものと、人工的又は自然的原因によって生じるものとがあります。私たちの日常生活で話題となる地盤沈下の多くは、ほとんどが海岸近くの沖積平野に集中しています。
地殻変動による地表面の変状には、地震の前後や火山活動によって生ずるものがあります。最近では1995年の兵庫県南部地震や1999年の台湾・集集地震での大規模な地盤の隆起や沈下が記憶に新しいことと思います。
沖積平野地域における地盤沈下は、地盤中の液体(多くは地下水)を抽出(揚水)することによって生じる圧密沈下によるものや、盛土などの荷重を新たにのせることによって生じる圧密沈下によるものが主体と考えられます。
圧密とは、水をたっぷり含んだスポンジを両手で抑えると、水がしぼり出されてその分だけスポンジが収縮するような現象のことです。つまり、水が強制的に排除されたり、排除するような力(荷重)が加わると、スポンジのように柔らかい地盤で構成されている地域では圧密により地盤沈下が生じます。
私達の地盤を構成している土は、土粒子とその間の間隙とで構成されており、砂よりも粘土のほうの間隙がはるかに大きく、しかもその間隙は水で満たされています。さらに、地盤の生成された時代が新しいほど間隙はより大きくなります。このように、地盤のつくられた時代が新しく(埋立地や造成盛土を含む)、かつ、その土が粘土に近く、間隙が水で満たされているような地盤は圧密沈下の発生しやすい状況にあります。
地盤沈下が生じると、地表面の構造物も一緒に沈下していくために水路が流れにくくなったり、構造物が傾いたりします。このため構造物が沈まないように長い杭で支えとやると、逆に建物が抜け上った状態となります。このように、地盤沈下は周辺地表面との沈下量に差が生じるため、私達の生活環境に影響を及ぼすこととなります。なお、都市部での過剰な地下水汲み上げにより発生する広域沈下と呼ばれている現象は全国の平野部で多く見られましたが、地下水汲み上げ量の規制を強化したことによってかなり沈静化しています。
建物(杭基礎)と外構との不同沈下
(撮影:都宮和久)
軟弱地盤上の道路の変形(凹凸)
(撮影:都宮和久)
建物と外周構造物との不同沈下
沈下により階段部分にブロックが継ぎ足しされ、新しい階段とされている。右側の斜路部擁壁には約30cmの沈下が生じている。
橋梁との取り付け部の沈下
堤防部分が沈下しコンクリート壁や護岸ブロックに亀裂や変状が発生している。
「株式会社ウエスコ 伊藤徹」