わかりやすい地質百科

砂礫地盤の適正な地下水利用

地下水の分布

地盤の中にある水が地下水で、不圧地下水と被圧地下水があります。一般に浅井戸でよく利用されているのが、河川の浸透水などが地下に浸透している不圧地下水です。扇状地性低地の砂礫地盤などに多く賦存しています。被圧地下水は洪積砂礫層や岩盤などの深部にあり、上部に透水性の低い加圧層があるため、上流の水圧を維持して被圧しています。深井戸で利用されます。いずれも、蒸発~降水~流下~浸透~流出~蒸発という地球規模の水循環のなかで、地下水が分布しています。
平成26年には、日本で水循環基本法が施行されています。同法で地下水が水循環の一部であり、水が「国民共有の貴重な財産」であると定義付けられました。また、水の利用に当たって、「健全な水循環が維持されるよう配慮されなければならない」とされ、貴重な資源の維持が期待されています。


図-1 地下水モデル図

浅井戸で適正な揚水量を算定するには

不圧地下水で適正な揚水量を算定するには、通常、下記の井戸公式が用いられます。その各項について、必要な調査と適用を示します。


図-2 不圧地下水条件モデル

k:透水係数(cm/s)
揚水試験や透水試験で把握します。目安として粒度分析のD10やD20から推定が可能です。
R:影響圏(cm)
一般的に実務的には不圧地下水では100~300mで、被圧地下水では500~700mと言われています(山本荘毅:新版地下水調査法1983p.254)。日本水道協会の「水道施設設計指針2012」p.94では不圧も被圧も同じ記載で500~1000mと記載されています。多量の取水施設になるので、大きな影響圏を設定しています。本来は、地盤で異なるので揚水試験で求める必要があります。
また、透水係数が大きいほどRが大きくなり、被圧では圧縮率が大きいほどRが大きくなります。不圧で透水係数が判る場合には、Siechardt(1962)の式「R=300ΔSk^0.5:(単位cm/s)」が良く使用されています。
また、日本水道協会の「水道施設設計指針2012」p.94のフローチャートでは、周辺井戸の影響を10~20cmにするように設定されています。
r:井戸半径(cm)
一般的に水中ポンプがはいる井戸径ですので、φ10cmが最小になります。最近は高開口率スクリーンがあるので、井戸損失を考慮して極端に大きな径とする必要はなくなりました。打込み井戸などでダイレクト方式で直接揚水する場合はその仮想径となります。逆に、多量取水する施設ではケーソン型の取水井もあります。
H:初期水圧(cm)
調査ボーリングや水位観測孔で設定する必要があります。
h:井戸での水圧(cm)
検討段階の明確な記述はありません。本来、本井戸を設置後に、段階揚水試験で限界揚水量を求め、更にその0.7~0.8を適正揚水量とするためです。
各指針の図表示では、日本水道協会の「水道施設設計指針2012」p.94では、h=0.4H程度、日本工業用水協会の「工業用水道施設設計指針・解説1989」p79では、h=0.5H程度で更に井戸効率C=0.5を乗じるとありました。そのため、図の解釈でh=0.4~0.5Hまで水位低下(S=H-h)させて良いと思われる方もいます。
木村(2017)らは、過去の事例で初期水圧の1/3の水位低下量、つまりh=2/3Hで限界揚水量になることが多いことを示しました1)2)。また、井戸公式でも下図のように1/3の水位低下量で限界揚水量になることが判ります。そのため計画段階では限界揚水量は、h=2/3Hとする必要があります。またその0.7~0.8(平均0.75=3/4)が適正揚水量ですので、適正水位低下量は1/3/(3/4)=1/4になります。つまり、h=3/4が適正揚水量になります。ただし、本井戸では個別に個性が異なるので、設置後に段階揚水試験をして再設定が必要になります。


図-3 井戸公式によるQ-S相関図

「株式会社エイト日本技術開発 木村 隆行」

<参考文献>
1) 木村隆行,渡辺俊一,今田真治(2017):不圧帯水層における帯水層厚と限界水位低下率の相関,地盤工学会,第52回地盤工学研究発表会,pp837-838.
2) 今田真治,木村隆行,渡辺俊一(2017):不圧帯水層における帯水層厚と限界水位低下率の相関,日本応用地質学会,平成29年度研究発表会,講演論文集,pp221-222.

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