地表水の流量は、流域、降水量、蒸発量や地下水との流出・流入量などによって変化します。このため、流域や降水量などが既知の場合、地表水の流量を測定することで、地下水の流出・流入量を想定することが可能となりますが、地表水の流量は降雨時の土壌の飽和度や中間流出までの時間的な速さなどの要因によっても変化します。
しかし、直接的な測定ができない地下水の流出・流入量を想定し、地質との関連を検討するために、有効な手段となります。特に、岩盤が露出し地下水への流入がほとんどない条件で長期間にわたり降雨がない場合には、地下水の流出のみ(基底流量)となり、地質と地下水量の関係を把握しやすくなります。
地質調査の観点から、地表水の流量測定を行う目的として、
といった内容が挙げられ、具体的には、
などのような適用事例が考えられます。
小規模な河川や渓流などでの地表水の流量測定方法を簡単に紹介します。
測定手法として、
が挙げられ、各々の測定方法や適用条件などについてまとめます。
測定方法 | 概要 | 適用条件 | 備 考 |
---|---|---|---|
1.容積法 | 渓流を土嚢などにより止水しVP管などを通して流下させ流量を直接測定する。 | 直接的な測定であり精度は高い。流量が多い場合困難である。 | 簡易な方法では地表水の完全な捕捉が難しい。 |
2.流速計法 | 通水断面を測量により作成し、流速計により数ヶ所の流速を測定し流量を求める。 | 流量が多い場合に適する。逆に水量が少ない場合、測定が難しく精度が悪くなる。流速が通水断面内で大きく変化する条件では精度が悪くなる。 | |
3.堰 法 | 河川や渓流の途中に三角堰などを設置しノッチ高を測定する。 | 岩盤や玉石の分布地での堰の設置は難しい。 砂や礫などの堆積物が分布する場合、地表水が地下へ浸透しやすくなる。 | 一般に堰は常時設置するため、簡易な構造の場合、豪雨時に破損する可能性がある。 |
4.塩分希釈法 | 一定時間、定量の食塩水を継続的に渓流に投入し、下流側にて電気伝導度を測定し、流量を計算にて求める。 | 流量の多寡によらず比較的簡易に測定可能である。 | 食塩以外の試薬もあるが、食塩を利用することが多い。 |
以上が、主要な測定法の概要であり各方法ともいくらかの測定誤差は生じる。現地状況や目的に応じて適切な手法を選択する必要がある。
<<測定状況写真>>
▼写真1 容積法-バケツなどを利用して水量を測定する。
▼写真2 流速計法
▼写真3 堰法-三角堰を利用しノッチ高を計測する(写真では自動測定)。
▼写真4 塩分希釈法
「(株)エイトコンサルタント 石黒 靖彦」