岩石や土砂の色彩は、風化作用、熱水変質作用、そのほかの化学的変化や含有物によって左右されている。そのため岩石、土砂の色彩を定量的に表現すれば、風化変質の程度や含有鉱物量などの定量的判断指標に応用できる。
測定は、客観的・定量的測定法として優れ、また軽量で操作が簡便な分光測色計(扶桑プレシジョン製 PRIMO MIRAGE 写真-1)にて行う。当測定器の表色はマンセル系、XYZ系、L*a*b*系が可能で、340-750nm間の分光反射率も得られる。図1に一般的に用いられる、L*a*b*座標系を示す。
風化作用の場合は一般的に風化が進行するにつれて、岩石の色彩が赤褐色系に変化していく。したがって特にa*、b*値は、数値が大きくなるほうに変化する。
写真-1 PRIMO MIRAGE
図-1 L*a*b*座標系
図-2は岩石の色彩(b値)あるいは450nm付近の反射率と、圧縮強度の関係図である。強度が約100MN/m2以上と硬質な試料(古第三紀花崗岩)において、それぞれ良好な関係が認められる。分光測色によって、未風化硬質な岩石の強度特性の把握の可能性を示した例である。
図-3は、セレンを環境基準値以上溶出する試料の判別図である。色彩値a*b*値の分布(分光測色)により、セレン溶出岩の判定がその場で瞬時に把握できる例である(a*b*値が、赤あるいは青線より左側に分布する試料はセレンを基準値以上溶出する岩)。
ともに、岩石の風化あるいは変質に伴う色の変化と物性値の変化がリンクした例といえる。間接的な物性値推定方法のため、適用に制限や工夫が必要であるが、分光測色計は軽量かつ簡易で、その場分析が可能であることから現場作業にも適している。今後も、様々な分野への応用が期待できる。
図-2 分光測色結果利用例(1)
図-3 分光測色結果利用例(2)
((株)エイト日本技術開発 磯野陽子)