土木学会「軟岩の調査・試験の指針(案)1991」および地盤工学会基準「JGS3431-2012」で紹介されている軟岩や硬土の強度調査方法で、針を貫入させ、その貫入量と貫入荷重の関係から針貫入勾配Npを求める試験方法です。下図のような携帯型針貫入試験器(軟岩ペネトロ計)が市販されており、現場で簡易に測定できます。
図-1 携帯用針貫入試験器の例1)
針を偏心させないように一定の速度で貫入させ、10㎜に到達するか、あるいは荷重器最大値に到達したときに、荷重と貫入量の関係を読み取ります。また、貫入量と貫入荷重の勾配を「針貫入勾配Np」として整理します。下図は詳細測定をした場合の例で、通常は10㎜での計測になります。
図-2 針貫入勾配の求め方の例1)
オールコアで採取されることが多い地すべりのボーリングコアでは、特に軟岩の新第三紀地すべりなどで、10cmピッチで針貫入試験が行われることがあります。その例を図-3に示します。この場合、針貫入勾配Np=0の極軟質領域の下端で、かつ、色彩値のギャップゾーンですべり面が把握されています。軟岩の硬軟区分を把握するためや、すべり面の把握のために有効な調査手法になっています。
図-3 地すべりボーリングコアでの針貫入勾配(N/mm)の測定例2)
土木学会「軟岩の調査・試験の指針(案)1991」には古い重力系単位で一軸圧縮強度quと針貫入勾配の相関などが記載されています。新しいSI単位表示の文献では、一部の文献に変換表示ミスもあり、過去の一軸圧縮試験quと針貫入勾配Npの相関を、ひとつの図にまとめた文献がありませんでした。そこで、過去の提案式と変換式を木村がとりまとめたものを、図-4に示します3)。この相関図で過去のデータは3グループ、(1)膨張性地山(2)新第三紀層および粘土改良体(3)古第三紀層におおまかに区分されて分布していることが判明しました3)。
図-4 過去論文の針貫入勾配Npと圧縮強度quの相関3)
ここで、それぞれのグループの代表的な式を図の番号で以下に示します。特徴的なのは、新第三紀層の泥岩砂岩については沖積粘土の改良体とほぼ同じ傾向を示すグループであること、古第三紀層はやや針貫勾配が高く、逆に膨張性地山の鍋立山では針貫入勾配が極端に小さいエリアに分布していることが判ります。そのため、地質に応じて、式を選定するのが良いと考えられます。
(1)膨張性地山(鍋立山でのデータ)
log qu=1.602 log Np+1.022 (qu:MN/m2 Np:N/mm)
鍋立山の膨張性地山14)式
(2)新第三紀層および粘土改良体
log qu=0.978 log Np+2.621 (qu:kN/m2 Np:N/mm)
岡田らの新第三紀と改良体3)式
log qu=0.978 log Np-0.3806 (qu:MN/m2 Np:N/mm)
岡田らの新第三紀と改良体4)式
log qu=1.0084 log Np-0.3184 (qu:MN/m2 Np:N/mm)
高橋ら新第三紀砂岩の6)式
log qu=1.011 log Np-0.3865 (qu:MN/m2 Np:N/mm)
内田ら粘土改良体の8)式
log qu=0.8025 log Np-0.4178 (qu:MN/m2 Np:N/mm)
小島ら東京湾泥岩等の10)式
log qu=0.9811 log Np-0.3817 (qu:MN/m2 Np:N/mm)
4)6)8)平均15)式
(3)古第三紀層
log qu=0.9754 log Np-0.7725 (qu:MN/m2 Np:N/mm)
高橋ら古第三紀の12)式
「株式会社エイト日本技術開発 木村 隆行」
<参考文献>
1) ㈱丸東製作所:「軟岩ペネトロ計 SH-70 取扱説明書」,pp1-5,2005
2) 木下篤彦,柴崎達也,長谷川陽一,山岡哲也,山﨑孝成:「地震時に風化軟
岩層理面をすべり面として発生した高速地すべりの発生機構,日本地すべり
学会誌,第50巻,第3号,pp103-112,2013.
3) 木村隆行:「針貫入勾配と圧縮強度の分布傾向」,日本応用地質学会中国四
国支部,令和4年度研究発表会,発表論文集,pp39-32,2022.